2005年12月4日

イラクで誘拐されたドイツ人のイスラム教徒で考古学者のズザンネ・オストホーフさんの行方は杳(よう)としてつかめず、家族の間では疲労の色が濃くなっています。

発足したばかりのメルケル政権にとっては、初めての外交問題での試練です。

ドイツのシュレーダー前首相は、イラク戦争に全面的に反対してきました。このことも理由の一つとなっているのか、これまでドイツ人がイラクで抵抗勢力に誘拐された例は、一度もありませんでした。

メルケル首相は2年前の米軍のイラク侵攻直前に、当時のシュレーダー首相との違いを強調するためか、イラクへの武力行使を支持して、ラムズフェルド国防長官に歓待された経験を持っています。

メルケル政権発足とほぼ同時の犯行は、はたして偶然でしょうか。

オストホーフさんは、イラクで市民への援助事業にも深く関わっているほか、抵抗勢力とも接触があった上、アラビア語が話せることから「万一誘拐されても、犯人を自分で説得して解放させるわよ」と知人に冗談を話していたことがあるそうです。


いくらイラクに住んでいて事情に精通しているとはいえ、スンニ・トライアングルを外国人が旅行するのは危険であり、この自信が災いとならなければよいのですが。

イラクの警察には、抵抗勢力に内通している警察官が多く、オストホーフさんも車で走るルートを事前に警察に連絡していたことが、抵抗勢力に待ち伏せされる原因の一つになったという説があります。

この誘拐事件が、ドイツ政府や、この国の世論のイラク問題に対する姿勢にどのような影響を与えるか、極めて注目されます。